Land Xとは?
「Land X」は、現実世界の農地をブロックチェーンを紐付け、農家には資金を、投資家にはその農地の収穫量に応じた収益を分配するDeFiプロトコルです。
https://testnet.landx.fi/
その仕組みを簡単に説明します。Land Xの登場人物は次の3者です。
- 農家
- バリデーター(検証者)
- 投資家
少しだけその背景の説明から入ります。なぜLand Xが誕生したのか(求められているのか)という解説と共に、その仕組みを解説していきます。
一般的な農家は伝統的な金融機関への融資にアクセスすることが難しいです。それは事業規模の問題や収入の不安定さなど、幾つかの理由が存在します。
農家はまとまった資金があれば、設備投資を行い更なる収穫量及び効率の向上に務めることができ、安心して農家経営を行うことができます。
筆者もweb3リサーチャーなのでweb3ばかりを調べていますし、最近はAIも生まれて、時代はITとなっていますが、人々の生活を支える巨大なインフラの1つは”農家”であることは間違いありません。どんな最先端のテクノロジーがあったとしても食べるものがなければ生きていけません。事実、アメリカにおいて農家の量は右肩あがりで増えています。
https://blog.landx.fi/landx-an-introduction-e32a0a2628a6
Land Xはそんな農家の支援を行うプロジェクトです。
農家はLand Xを通して未来の収穫量の一部を販売できます。未来数十年の収穫量を予測し、その収穫を獲得できる権利(先物権利)をLand Xを通じて販売します。これはいわば、未来の収穫量を担保に融資を受けているような状態で、農家は先んじて資金調達をすることに成功します。
実は、既存の伝統的な金融市場でも約5%が農業金融で構成されており、投資家目線でのポートフォリオの1つとして農業系の金融商品は人気があります。
https://blog.landx.fi/landx-an-introduction-e32a0a2628a6
しかし、現在のDeFi市場には暗号資産やNFTだけで、現実世界の安定した価値である農家に基づいた金融商品は存在しません。Land Xはこのような課題を解決し、DeFi市場における投資家のポートフォリオの1つに「農家由来の金融商品」を提供します。
ここまで、「農家」と「投資家」は出てきましたが「バリデーター」は出てきていません。「バリデーター」は農家が販売する未来の収穫量を検証する存在です。本当に土地が存在するのか、土地の広さやどれくらいか、未来の収穫量予測は適切か、これらを法律的な観点と経済的な観点から検証し、実際のトークンにするサポートを行います。この際に検証した内容と農家との契約はNFTとしてオンチェーンに刻まれます。
整理すると、Land Xは農家が未来の収穫量をバリデーターの審査を経てトークン化し投資家に販売できるDeFiプロトコルです。
Land Xの仕組み
では、その仕組みをより具体的に見ていきます。Land Xには3種類のトークンが出てきます。
- xTokens
- cTokens
- LNDX
順番前後しますが最後の「LNDX」から解説します。
「LNDX」はLand Xのガバナンストークンです。LandXプロトコルの管理や投票に利用されます。また一定数以上保有していると農地のバリデーターとなることができます。
そして、本題はここからです。
簡単にLand Xの全体像をまとめた図は下記になります。
https://blog.landx.fi/an-introduction-to-derivatives-and-tokenized-assets-34211e81c499
まず「xTokens」から解説します。
「xTokens」は現実の農作物に紐づけられたトークンです。各農作物毎に存在し、1xTokens当たり年間作物1kgを獲得できる権利を有します。例えば、大豆と紐づいたxTokensはxSOYでコーンがxCORNのようになります。
xTokens保有者は年間1kgの作物を獲得できる権利を有していると書きましたが、年に一度1kgが届くということではなく、毎日0.0027kg(1kgを365分割)分の商品利回りを獲得できます。
この利回りが「cTokens」の形で配布されます。1年間xTokensをステーキングすることで1cTokensを獲得することができ、1cTokensは農作物1kgの価格にペッグされたステーブルコインとして機能します。
農作物の価格はChainlinkを通して世の中のマーケットプレイスの値段が随時反映され、それがcTokens価格に反映します。また、xTokensもcTokensどちらもERC-20トークンですので、自由に売買することが可能です。(ちなみにLand Xはイーサリアム上に構築されています)難しいですね、、。
例えるなら、NOT A HOTEL NFTのイメージに近いです。
NOT A HOTEL NFTは”47年間分の宿泊権利NFT”を購入すると、毎年”その年の宿泊券NFT”が付与される仕組みです。前者のNFTも後者のNFTもどちらもNFTなので好きなタイミングで自由に売買することが可能です。
この仕組みによって、ホテル建設者は先んじて約50年分の運営資金を手にすることができ、宿泊者も通常で泊まるよりも安く宿泊できる権利を手にします。また、この先該当施設の宿泊券が高騰していった場合、その差額で儲けることも可能となります。
↓NOT A HOTEL に関して詳しくはこちら
不動産利用権NFTで理想の体験を手に入れる! | localweb3
Land Xに変換すると、”47年間分の宿泊権利NFT”が「xTokens」で、”その年の宿泊券NFT”が「cTokens」です。
Land Xの場合、49年間の農作物の分配コミットが基本で、農家はそれだけの年数において毎年1kgの農作物収穫の収益を手にする権利をバリデーターの検証の元でxTokensとして生成します。(例えば、小麦農家が49年間1,000kg/年の収穫が見込める場合、1,000xWHEATを発行します)
その発行したxTokensを販売し、農家は収益を手にし毎年農作物を収穫します。そして、収穫収益としてxTokensホルダーには年間1kgに相当する「cTokens」という形で毎日分配されます。
また、個別のxTokensに投資するのではなく、インデックス投資の要領で全てのxTokensが混ざった「xBASKET」という商品も存在しています。投資家はこの仕組みを通して、DeFi市場で新しいポートフォリオを獲得することができます。現実世界の農作物に紐づいたトークンとなるので、急激な価格乱高下が生まれづらく、他の金融資産が下落した際のリスクヘッジ商品としても機能します。
Land Xの買い方
現在はテストネットですが、その買い方についても簡単に解説します(2023年8月初旬の執筆時点の手順となります)。
①ウォレットコネクト
アプリを開くとこのような画面となるので、まずはウォレットを繋ぎましょう。何か操作をしようとするとウォレットコネクトを求められます。
https://testnet.landx.fi/dashboard/xTokens
ウォレットの作り方はこちらの記事をご覧ください。
画像で解説!Metamask(Web3のお財布)の作り方
②ダッシュボード
ウォレットを繋ぐと保有しているポートフォリオの価格変動が見えるダッシュボード画面に遷移します。
そしてダッシュボードの下にいくと各作物のxTokensが一覧で表示されているので、興味がある作物をクリックします。
③作物の情報を確認
自身が保有しているトークン数、ステーキング、過去の価格の変遷、想定利回りが確認でき、USDCを活用してxTokensを購入することができます。
簡単ですね。現在はテストネットですので、ダッシュボード右上にある「Testnet Faucet」ボタンを押すと1ユーザーに付き一回、0.005goETHと2000USDCが貰えるので、試してみることが可能です。
また、別のページからガバナンストークンである「LNDX」トークンの購入やステーキング、投票が可能となっています。
Land Xの展望と考察
以上、Land Xの概要について解説してきました。少し難しい箇所もあったかもしれませんが、簡単に言えば、農作物の未来の収穫量をトークン化して販売し、投資家はその収益を毎年得ることができるという仕組みです。
この領域はRWA(現実世界資産とリンクしたトークンを発行する)と言われ、現在非常に盛り上がっています。
↓RWAの詳細や地方創生との関わりはこちらの記事をご覧ください。
地方創生×RWAの可能性を考察する | localweb3
中でも、Land Xは農家と紐付けるRWAプロジェクトなので、地方創生とも非常に相性が良いです。新型コロナウイルスとロシア・ウクライナ戦争などによって世界経済が不安定な中で、投資家はポートフォリオの1つに安定してインフレに強い資産を求めています。
既存の金融商品でも購入していますが、DeFi市場でもそういった商品が登場することで、既存の金融市場の投資家がよりDeFiへ流れてくることが期待できます。また、暗号資産やNFTといった投機的な存在ではなく、安定した資産運用としてDeFiを活用する未来にも繋がります。
そういう意味で、Land Xは非常に期待感が持てるプロジェクトと言えます。
現在はまだテストネットでの運営ですが、近いうちにメインネットのローンチを予定していると発表しています。また、公開されている2023年のロードマップ中にはメインネットローンチ後のクロスチェーン対応や新しい商品である「xUSD」や「xNFT」といった構想も挙げられています。
https://medium.com/landx/2023-roadmap-update-ddb9f2c7723
今後も注目していくとともに、メインネットのローンチを楽しみに待ちたいと思います!