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論考

カーボンクレジットの国内事例に学ぶ、CO2削減に向けReFiプロジェクトを分かりやすく解説

2023/07/082023/11/02MASA

目次

ReFi(Regenerative Finance)とは、分散型金融(DeFi)から派生した新しい金融システムの一つで、主に地球の環境問題や社会問題をブロックチェーンの技術を用いて解決しようとすることを目指しています。

近年世界中ではゼロカーボンに関する取り組みが行われており、政府や国際機関もゼロカーボンに関する取り組みの支援をするための政策や環境を整備していますが、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や気候変動の緩和といった世界的な課題に対応するために、ReFiは重要な役割を果たすことが期待されています。

日本においても2050年までにCO2の排出を0にすることを目標としているので他人事ではありません。

本記事では現在最も活用されている領域としてカーボンオフセット市場での国内の主な活用事例やプロジェクトを紹介します。

ゼロカーボン時代の新しい取り組み


2015年に採択されたパリ協定に基づき、国連加盟国である、120以上の国と地域が2050年までにCO2の排出を0にする取り組みを行っています。カーボンニュートラルの達成のためにはエネルギー燃料である化石燃料を使用しない、再生可能エネルギーの活用や、排出したGHGを吸収して相殺(オフセット)して差し引き0にするという大きく分けて2通りの方法があります。

当然国家の目標は企業にも落とし込まれることになるので、経済活動の中で生じるGHGの排出を正味0にする必要がありますが一企業が出来ることには限りがあるため、他社が排出削減したカーボンクレジット※1を活用することで、効率的にゼロカーボンに関する取り組みを進めています。

また、一口にカーボンクレジットと言っても政府が公認している正規のカーボンクレジットと、民間(NGO・企業・団体・個人など)が主体となって発行しているボランタリーカーボンクレジットに別れます。
※1:企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器導入などを行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)をクレジット(排出権)として発行されたもの

現在のカーボンクレジットの仕組み

カーボンクレジットとは、市民、企業、NPO、NGO、自治体などの構成員が、主体的に温室効果ガスの排出削減い取り組んでいくために、自分達だけで削減不可能な目標値に対して、他所での排出削減分を自社内での削減困難な部分の排出量に対して埋め合わせを行うことを表します。

出典:経済産業省

カーボンクレジットの問題点


本記事では日本政府主体で運営、認可されている制度や仕組み、既存の取引システムが抱えている主な問題点などを抽出して紹介します。

上記表のように購入出来る対象者や購入方法が複雑化されており、仲介事業者を介さずに気軽に調達する事は困難です。
特に年間発行量の多いFIT非化石証書、J-クレジットに関しての簡単な購入フローは、
以下の手順を踏んで購入する必要があります。

【FIT非化石証書発行プロセス】

  1. 電力卸取引市場に発注書を提出(必要数量、希望応札単価を記載)
  2. 市場の入札に参加(年4回)
  3. 応札数量と単価に応じた入金を行う


出典:非化石価値取引市場について

【J-クレジット発行プロセス】

  1. J-クレジット制度への参加検討〜計画書の作成
  2. 第三者機関によるプロジェクト審査〜登録作業
  3. データのモニタリング〜モニタリング報告書の作成
  4. モニタリング報告書作成〜検証
  5. クレジット認証申請〜認証完了


出典:経済産業省

上記手順で示した通り、煩雑な事務処理が必要になります。
よって、人的リソースや排出削減量が少ない中小企業や個人が参加することは難しく、
一部の大企業しかマーケットに参加出来ていない状況です。

一方で、世界中でカーボンクレジットの需要は高まり続けており、政府手動の取引機会の創出だけでは、間に合わない。また、基本的には法人向けの取引マーケットであるため、一般市民が参加出来る仕組みが確率されていない事が問題に挙げられています。(グリーン電力証書に関しては一般ユーザーも参加可能。EV購入時に国から補助金を受け取る時のみ使用用途がある)

今後は、一般ユーザー、企業、地方自治体など様々なステークホルダーがそれぞれの立場で利用しやすいクレジットと取引マーケットを構築していく必要があります。
自主的炭素市場拡大タスクフォース(TSVCM)によると、パリ協定で定められた目標を達成するためには、2030年までに自主的炭素市場におけるカーボンクレジットの取引量は15倍にも成長する必要があると発表しています。

また、直近では官民連携の動きが盛んになっており、民間で脱炭素マーケットに取り組む企業は多く存在します。同市場も21年には前年比で5倍まで急成長しており、今後も20兆円までマーケットが拡大する予想がされています。

【現在のカーボンクレジット制度のデメリット】

  • クレジットを発行、購入するまでのプロセスが煩雑、中小企業や個人事業者の参入障壁が高い
  • プロジェクトや発電所毎のCO2排出削減量の算定に対する信頼性や透明性が欠如している
  • 事業者間で転売できる仕組みが整備されていないため、クレジットの流動性が低い

ReFi概要説明

ReFi(再生金融)とはWEB3技術によって、経済活動で破壊されてきた地球の環境問題を改善、気候変動の進捗を緩やかに移行させることを目的としています。

このような技術が生まれてきた背景として、世界的なESG投資の機運の高まりと比例して目に見えない「非財務諸表」※2の重要性がグローバル企業だけでなく、中小企業や自治体まで求められている点が挙げられます。これらの企業や自治体が目標を達成していくためには、過度な設備投資を避けながら環境価値の取引を行うことが最適解になりつつあり、ReFiの使い所として非常に有望であると言えます。

特に先ほどの章で解説した非効率なカーボンクレジットの市場において、システム基盤をブロックチェーンを活用して運用することで効率的に取引を行うことが可能になっています。更に近年ではReFiの考えが急速に広まり様々な脱炭素プラットフォームが加速度的に生み出されており、法人、個人問わず取引に参加することが可能です。
ブロックチェーンを基盤に取り入れるReFiプロジェクトを行う意義は以下の通りです。

【ReFiを取り入れるメリット】

  • 高い改竄体制を持つデータベースで、クレジットの流通記録のトレースが確保される
  • スマートコントラクトで申請から認証までのプロセスを簡素化
  • ブロックチェーンの相互運用性の効果で複数プラットフォーム、多くのステークホルダーを巻き込んだ取引が可能


これまでカーボンクレジットがスケールしてこなかった課題や問題点がReFiプロジェクトを通して、解決する兆しが見えてきました。

当然ブロックチェーン技術だけだなくIOT機器による正確なリアルタイムなデータ収集(再エネ発電量や吸収したCO2の常時モニタリングなど)ハードウェアの進化も必要になりますが、数年後には更に正確な情報が得られるだけでなく、大きな取引チャンスが個人にも舞い込んでくることでしょう。

また、これまではカーボンクレジット全体のマーケットの仕組み上、個人が参入することが困難でしたが、ReFiプロジェクトによって、これらの参入障壁はかなり取り除かれたと言えます。

個人向けのReFiプロジェクトとして近年注目されているのが、カーボンクレジットをトークン化して、一般ユーザー向けに販売するプロジェクトDAOの発足です。
これまで参入出来なかった個人を巻き込む事で、社会全体の需要が増加し、企業の排出削減努力が促されることで社会全体にとって好循環を生み出しているのです。
当然、個人は保有するトークンの価値が高まり大きな金銭的リターンを得ることに繋がります。
※2 非財務諸表:企業に関する情報のうち、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー等の財務以外の情報のことで、ESG情報(環境、社会、ガバナンス)に加えて、企業の中長期の経営戦略、知的財産情報等を指す

個人向けReFi向けプロジェクト概要


日本は2050年にCO2の排出量を0にすることを目標に掲げて動いています。
政府の動きに対して企業も自分達の経済活動の中で発生したCO2の排出量を可視化させ、排出を0にすることを求められています。

一方でそういった企業の活動は、消費者にはほとんど届いておらず、また機関投資家のように大規模な再エネ発電所に投資するような資金力もないため、日常を通して関わる手段が少ないのが現状で、私達が環境問題を身近に感じにくい要因になっています。

こういった問題を解決するために、リアルな再エネ発電所などの環境設備や植林活動などによって削減されたCO2をNFT化し、消費者が小口で買えるように仕組みを作ることで一般消費者が発電所のデジタルオーナーの一人として関わる仕組みが構築されました。

また、発行者が不正が出来ないようにブロックチェーンによって透明性の高い形で情報が管理されており、CO2排出削減元のプロジェクト概要など消費者が可視化出来る仕組みになっています。

個人がReFiプロジェクトに取り組むメリット

【購入者側のメリット】

  • カーボンオフセットと引き換えに発行されたNFTを購入したユーザーは、今後の脱炭素の機運が高まり続ける世界経済において、所有するNFTの価値向上が大幅に期待される。またはポイントやマイルに還元される
  • 共通の目的を持った個人間が繋がることで、知見の共有や交流が活性化される。


【供給者側のメリット】

  • 自社で排出削減されて生まれたクレジットの価値が向上、高値で売却が可能。
  • 設備の早期投資回収が可能。
  • 企業価値の向上、ESG投資の呼び水として活用できる

自治体向けReFi向けプロジェクト概要


日本にはおよそ1,600の自治体が存在しており、それぞれが独立した行政組織として機能しています。(2050年までにCO2排出0を目指す、環境省主導のゼロカーボンシティ※1を表明している自治体は934自治体(23年6月10日現在)存在しています。)

各自治体が高い目標を達成していくために、環境価値をクレジット化し、市内の事業者の商品と紐付け、カーボンオフセット商品として域外に販売、地域への歳入を増やす活動などの活動が一部の自治体で進められています。

また、ふるさと納税のスキームとも相性が良いため、自治体運営の施設で削減されたCO2排出量をNFT化して、マーケットで返礼品として出品するなどユースケースが確実に広がっています。

自治体がReFiプロジェクトに取り組むメリット

  • 地域内のエネルギー地産地消に貢献出来る
  • 地域内のゼロカーボンに関する取り組みの発信効果が見込まれる
  • 環境価値が付与された商品の開発が出来る

captureXプロジェクト紹介


出典:capturex

capturexとは株式会社Bajii(バッジ)が運営する、脱炭素社会の実現を目指すWeb3気候テックサービスであり、CO2の回収が重要な目標とされています。
CO2回収設備やメガソーラー設備などの脱炭素社会向けの設備をデジタルツインNFTマーケットプレイスとして提供しており、一消費者がデジタル設備のオーナーになることができるプラットフォームとして注目されています。

デジタルオーナーは、自分が所有するNFTと紐づく設備の日々のCO2回収量をチェックすることができるだけでなく、CO2回収量に応じてマイルを獲得し、これらのマイルを利用してエコなお買い物を行うことが可能です。

「CAPTURE TO EARN」というWeb3コンセプトを採用しており、2050年までに脱炭素社会を実現するための取り組みを加速させることを目指しています。


出典:capturex

プロジェクト参加方法

プロジェクトに参加するにはまずCO2削減のための各設備のNFTを購入する必要があるため、
まずは購入までのフロー紹介を行います。
1.公式サイトにアクセスし、トップ画面の「NFTを日本円で購入する」ボタンをクリックします。

2.日本円で気になる発電所NFTを選択する。
   (現在はJERA※3が所有する太陽光発電所NFTが多いです)

出典:capturex

3.「購入する」ボタンをクリックしてNFTを購入します
   (現在クレジットカードでのみ決済が可能です)

出典:capturex

4.「HOSHI」という自分のデジタル上の土地に購入した設備が設置される。

出典:capturex

設置された設備に対してエールを送ると、対価としてエールポイントを獲得できます。
今後は貯めたポイントをNFTと交換したりプラットフォーム内のユーティリティトークンとして活用することが可能です。また、将来的には他社発行のポイントとの交換やQRコード決済との連携によって日常の決済で使えることを計画されています。
※3:東京電力と中部電力の合弁会社で、国内最大の火力発電事業者

今後のマイルストーン


今後はふるさと納税との連携を更に強化していきながら、地域毎の再エネ設備などの環境価値を地域に還元していく方向性です。その他、漫画、アニメキャラとのコラボも計画されており、ユーザー目線のUX /UIの向上がかなり期待されます。

また、2050年に向けてゼロカーボンを達成する必要があるだけに今後は個人毎の取り組みが非常に重要なフェーズに入ってきます。

その中で、日本よりもマーケットが育っているグローバルとの市場連携は非常にインパクトが大きい取り組みになるだけでなく、日本の豊かな海洋資源(ブルーカーボン)を海外に向けて提供することで、脱炭素の機運が高まる国際社会の中での立ち位置を確立することにも繋がるでしょう。

岐阜県恵庭市カーボンクレジットプロジェクト紹介


出典:デジタルクロス


岐阜県恵那市(以下、恵那市)、日本ガイシ、リコー、IHIは昨年10月から自治体が出資する地域新電力である恵那電力の再生可能エネルギー(再エネ)による発電および売電事業を通じて恵那市が得た環境価値を市内事業者の商品と紐付けるカーボンオフセット商品の開発の乗り出すことを発表しています。
基盤のコンソーシアム型ブロックチェーンはRICHOとIHIによる共同開発となっており、市内の再エネ電源の流通記録をトラッキングしてクレジット化した環境価値をJ-クレジット発行プロセスに沿って証書化、外部のマーケットで販売するという仕組みです。

エネルギーの自給率が8%と貧弱である日本にとって、外部のエネルギー資源に頼らず、
地域内の小規模再エネ電源を有効活用出来るブロックチェーン基盤の取引プラットフォームは非常に魅力的であると言えるでしょう。

環境省では現在、ブロックチェーンを活用した J-クレジットのデジタル化の検討を行っており、
その中で一部自治体や企業の公民連携プロジェクトが進められています。

ブロックチェーン基盤のコンソーシアム型データベースにモニタリングデータを蓄積し、国が管理する、登録簿システムと連携することでシームレスかつクイックに、プロジェクト登録〜クレジット認証までのプロセスを簡素化する事が可能になります。

出典:デジタルクロス

まとめ

これまで紹介してきたようにブロックチェーンを基盤とした「ReFi」は確実にカーボンクレジット市場の効率化と質の担保を同時に実現するためのソリューションとして実用的に使われるケースが増えています。

まだ、昨今ではReFiプロジェクトを自分達のブロックチェーンに呼び込むために地球環境を壊さないための、分散型の取引承認プロトコルや、PoS(プルーフオブステーク)のコンセンサスアルゴリズムを取り入れる暗号資産プロジェクトが増えています。

一時は投機的な側面からブームに火がついたNFTですが現在は冬の時代に突入しており、
一部のコレクターの間で流通しているだけです。

今後汎用的にNFTが使われる分野としてカーボンクレジット市場は非常に有望なマーケット
になっていく可能性があり、プロジェクトの数も増えてくることが予想されるため、私達も更に、
地球の環境問題を自分事として捉えて、日々進化するReFiプロジェクトに注目していきたいところです。

MASA

ブロックチェーン、WEB3業界の知識と、これらの技術がどのよう既存産業に影響を与えていくのかを分かりやすく伝えることをモットーにWEBライターとして発信中。

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